経済成長と都市の記憶

Note

Hackescher Markt(ハッケシャーマルクト)駅のすぐそばのスーパーが、建物ごと取り壊されていた。観光地の目の前で客の入りがよい店舗だったのに。ジェントリフィケーションのついに波がここまで……などと思ったりしたが、実は全く別の理由かもしれない。駅前で建物が密集していて、目の前には路面電車が走り、人通りも多いこの場所に、ぽっかりあいた不思議な空間。一体何が建つんだろう? この穴が塞がって暫くしたら、ここに古めかしいEDEKAがあったことなんて、すぐに忘れられてしまうだろう。取り立てて思い入れがあったわけではないが、なんとなく寂しさを覚える。

ベルリンという都市が持つ複雑な歴史がこの街を特別な存在にしているのは確かで、少なからずの人がここに惹かれる理由の一つには、街中に残る様々な過去の面影が挙げられるのではないかと思う。だからこそ、より一層の経済効果のために古いものを剥がして壊して捨て去って、シミ一つなく綺麗でのっぺりとした白い箱モノを作ったところで、一体何が手に入るのだろう? と考えてしまう。どのショッピングモールに入っても同じテナント、似通ったファストファッションにフードコート……。もちろん、わたし自身もそういうところで買い物をするので、罪深い共犯者であるが。